発達障害児を養育する家族のFamily Empowermentについて

わが国の家族は大きな変容の時代を迎え、少子高齢化だけでなく、未婚率・離婚率の増加など、家族の構造的・機能的脆弱性が増す中で子育ては孤育てになりつつある。障害児、特に、発達障害児を養育する家族の子育てに対する困難感や負担感は相対的に高まっているといえよう。

“家族が自分たちの生活を家族・サービスシステム・社会などと協働することで上手くコントロールできている状態またはその能力“、すなわちこれを「家族エンパワメント」と定義するが、この「家族エンパワメント」が昨今の我が国の社会情勢の中では低くなりつつある。発達障害というのは目に見えない脳機能障害であり、周囲社会からの障害理解が得られにくく、”子どもの我儘がすぎる“”親の躾が行き届いていない“と子どもや親に非難の目が向きやすく、そのせいで親が心身症に陥るケースや子ども虐待に至るケースも少なくない。もちろん調査でも発達障害児の家族エンパワメントは重症の身体障害者を養育する家族のそれに比して有意に低い結果だった(涌水理恵. 障害児を養育する家族のエンパワメントに関する実態調査―重症心身障害と発達障害、異なる2つの障害群での比較・検討―. 外来小児科, 15(1), pp.25-30. 2012)。

当該家族の負担感や困難感を軽減させ、家族エンパワメントを促進するため、家族を「家族(内)」「サービスシステム」「コミュニティ」の3側面から継続的にエンパワメントしていく必要がある。具体的には、発達障害児の主たる養育者と配偶者、祖父母や親戚など同居家族や拡大家族のうち希望する対象に「家族(内)」の調整について話し合っていただく機会を設定したり、かかりつけ小児科の医師や看護師や臨床心理士ほかのスタッフ、療育園やセンターのスタッフ、親の会、行政の障害福祉課の職員、学校の担任や保健室の養護教諭などに「サービスシステム」「コミュニティ」の側面からリソースとしてどんなことができるかを家族にお知らせしたり、家族と話し合っていただく機会を設定したり、という活動をおこなっています。

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