「困りごと」の実態および全国調査の結果

近年、病院や在宅医療の現場においてクレームや暴力等が深刻化しているというとい現状があります。被害を受けた医療者の多くは自己責任と捉え、誰にも相談できていない実態も明らかとなっています。
以上のような背景を受けまして、我々はこのたび国内における初の実態調査:小児医療現場での患者・家族とのやり取りにおける「困りごと」対応力強化のための実態調査をおこなう運びとなりました。

近年、病院の診察室で医師が患者に刺された死傷事件や看護師が煙草の火を押し付けられたことによる火傷、噛まれたことによる局所性疼痛症候群、殴られたことによる頸椎捻挫・眼窩底骨折、刃物による複数受傷など後遺症を残して継続的な治療が必要な事例が報告されています(三木、2015)。在宅ケアの場面でも、医療職に対する無理難題の押しつけやクレームが深刻化しているという報告(武ら、2008)があります。

被害を受けた医療職者の多くは患者・ご家族の不適切な行動に関して不安を感じつつも、被害を受けたのは自己責任と捉えて我慢をし、誰にも相談できていない実態が明らかになっています(Gerberich et al, 2000;岩尾ら2013)。

小児医療現場においては、現時点で国内での調査報告はありません。しかし小学校では、4年連続で暴力件数が増加しており、平成27年度では過去最大となっています(文部科学省初等中等教育局児童生徒課 2016)。またモンスターペアレントが教師を悩ませ(尾木2008)、担任や校長の自宅に深夜に電話をかけ、長時間にわたり学校への不満を述べたり、理不尽な要求を通そうとしたりする事例や、保護者が教師の頭部を殴り金銭を脅し取った事例も報告されています(小坂ら2011)。
海外の小児医療現場では、特に待ち時間の多い小児救急において、児や家族からの暴言が多い現状がわかっています(McAneney & Shaw, 1994)。小児科研修医の3分の1が暴力や暴言を経験しており、71%が取るべき対応を教わっておらず、74%が怒りを抱える児や家族への対応について、カリキュラムに含めるべきであると感じていました(Judy& Veselil, 2009)。

以上のような背景を受けまして、2018年に国内における初の実態調査「小児医療現場における、患者(児)と家族等からの暴言・暴力・セクシュアルハラスメント・嫌がらせの実態と対応に関する調査」を実施し、全国521の医療施設に勤務される3605人の職員の方に回答へのご協力をいただきました。結果をまとめましたので、ご報告いたします。全国実態調査結果はこちら。

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