the STARx(The Self-management and Transition to Adulthood with Rx = Therapeutics)-P(The Parent)の開発と活用について
The STARx-Pについて
日本において、患者の移行に対する保護者の認識に焦点を当てた先行研究は少なく、移行の必要性や試みについて質的に調査したものや症例報告に限られている現状です(深川, 2006; 加藤, 中野, 2015; 櫻井, 2016)。
保護者が慢性疾患を持つ患者の移行準備状況を評価するツールとして、米国のNazareth ら(2018)が開発したThe STARx(The Self-management and Transition to Adulthood with Therapeutics = Rx)-P(The Parent)は、全13項目と“Disease Knowledge”、“Provider Communication”、“Self-management”の3つの下位尺度から構成されます(Nazareth et al., 2018)。 “Disease Knowledge”では疾患の対処法など患者の持つ疾患知識を尋ね、“Provider Communication”ではかかりつけ医師との協働など医療者とのコミュニケーションの状況を尋ね、“Self-management”では計画的な内服など患者の自己管理の状況を尋ねます。回答は5リッカート式であり、“How often did your child make an effort to understand what his/her doctor told them?”や、“ How often did your child need someone to remind him/her to take their medicines?”など“How often~?”で尋ねる質問項目には“ Never(1点または5点)” “ Almost Never(2点または4点)”“Sometimes(3点)”“ Almost Always(4点または2点)”“ Always(5点または1点)”で回答します。“How much do you know about your illness?”など“How much~?” で尋ねる質問項目には“Nothing(1点)” “Not Much(2点)” “A Little(3点)” “Some(4点)”“ A lot(5点)”で回答します。“How easy or hard is it for you to talk to your doctor?”など“How easy or hard~?”で尋ねる質問項目には“ Very Hard(1点)”“ Somewhat Hard(2点)”“ Neither Hard nor easy(3点)”“ Somewhat Easy(4点)”‟Very Easy(5点)”で回答します。内服に関する質問項目が多いのですが、内服の必要がない患者はその分、移行の負担が軽減されると解釈でき “I do not take medicines right now(6点)”を選択させることで、内服のない患者を除外することなく総じてどんな患者でもこのツールを用いて評価することができます。選択した回答により1項目につき1~5点または1~6点が加算され、これらの全体の合計および下位尺度得点が高いほど、日常の自身の健康管理や主体的な受療行動が獲得できており、移行準備が円滑に行われていると解釈されます。
The STARx-P原版のCronbach’s α係数は“Disease Knowledge”は.759、“Provider Communication”は.696、“Self-management”は.545で(Nazareth et al., 2018)、The STARx-P日本語版のCronbach’sのα係数は.759-.884(尺度全体および各下位尺度)また再テスト法における級内相関係数は.776-.900(尺度全体および各下位尺度)であり、十分な内的一貫性と再現性が確認されています。The STARx-P日本語版のご使用については以下のフォームからお問い合わせください。